東京デザインプレックス研究所・特別講座でのレクチャー&ワークショップ

2012.11.09


先日、東京デザインプレックス研究所という昨年開講した専門学校に

ゲスト講師として招かれ、レクチャーとワークショップを行いました。

この講座はプレックスプログラムという講座で学生限定の講座で、

外部のプロのデザイナーが行います。

 

レクチャーでは自分の学生時代の作品や今現在こんな仕事をしている、

といった自己紹介的なことを序盤に少しだけ紹介し、

話しの中心としたのは主に展覧会の仕事のことです。

個々の作品に内包された文脈を読み取ることはもちろん、作品相互に存在する文脈、

多くの作品が展示されている場合はその分類自体が文脈を持ち、

最終的には展覧会の企画自体が、そのときどきの世の中の文脈とどのような関係性を持っているか、

その総体を踏まえながら、いかに可視化してくかという風にして段階的に解説をしていきました。

 

また、最近自分がデザインをする上で心がけている部分が「本当の理解」へ促すということです

例えば誰かが何かの情報に触れるとき、そこで「分かったつもり」という状況になってしまうと

その情報伝達は失敗に終わったと言えます。

どんな情報にも文脈が潜んでいて、そこを辿って行けば本当の理解へとつながり、

気づきや発見や学びが生まれるのだと思います。

その人は文脈の広がりを知ることができると、俯瞰してみたり寄ってみたりを往来しながら

思考を巡らせることができる、つまり「多視点」を得ることできます。

様々な視点から物事を観察してみる、考えてみる、当たり前のことを当たり前でない物としてみる、

という視点は情報発信のツールが多様化すればするほど、

とても大切になるのではと考えています。

 

こういった僕なりの考え方を一通り話した後に、

2010年にグラフィックを担当した「世界を変えるデザイン展」の話しをしていきました。

この仕事ではポスターやフライヤーやキャプションパネルなど、色々なツールを制作したわけですが、

レクチャーでは主にデザインハブ会場で制作したインフォグラフィックについて話しました。

ここでは世界百数十ヶ国の社会課題のデータを集め、それらを日本を基準にして

課題の深刻度を比較し、世界中の課題が現在どのような様相になっているかを

俯瞰するための装置として制作しました。

展示された個々のプロダクトがミクロの視点(そのプロダクトが解決したある課題)であるとしたら

インフォグラフィックは各課題が低層で深く繋がり、様々な文脈を抱えているのだということを

マクロ的な視点で示しています。

つまり、プロダクト(ミクロ)←→インフォグラフィック(マクロ)の関係性の中で、

来場者自らが、社会課題に対する理解の導線を自分で築いていける仕組みにしています。

 

グラフィックデザイン、例えばポスターなどを制作するときに良く言われるセオリーが

「できるだけそぎ落としてシンプルにし、その分伝達の速度と強度を高める」

という話しがあると思います。

それは一つのセオリーとして正しいし、効果的なヴィジュアルを作る上では必要なことだと思うけど、

一方で、何かのメッセージを伝えた先の、ではその奥底にはどのようなことがあるのか?

といった部分までナビゲートして行きたいという欲求が自分にはあり、

そんなこともあってインフォグラフィックといった手法は興味の中心なのです。

つまり、伝達の強度を高めつつ、情報をそぎ落とさずに、更にその先の、

文脈の広がりへ観る側に能動的に関わらせる。

こういった自分のこだわっているところを色々と話してみました。

 

まぁ話し始めると時間がいくらあっても足りない訳で、、、

相変わらず「タイムオーバー」状態です。

 

その後、ワークショップを行いましたが、

今回は予め宿題を出しておいて、完成した作品をみんなでディスカッションしながら

他者の視点の在り方を学んで行くような流れとしました。

 

課題はデヴィット・ホックニーがポラロイドカメラを用いて制作したアートワークを参考モデルに

身の回りの日常空間を記述する、という内容です。

用意した6つのキーワードをランダムに振り分けて、

各受講生は一つのキーワードを自由に解釈しながら、撮影をしてもらいました。

ホックニーのアートワークをモデルにしたのはいくつか理由があります。

 

一つは、テクニックや機材等の条件が全員全く同じになることで

「どこで何を意図して撮影するか」という視点や思考の部分だけがクローズアップされることです。

 

もう一つは、レクチャーで説明した概念を、実作を通して体験してもらうためです。

ホックニーのアートワークは言わばパノラマ写真なのですが、

ポラロイドカメラを使っていたことが大きなポイントです。

並べられた一枚一枚の写真が独立した写真でありながら、並べることで独特な視覚表現になっていく。

これはディテールの集積からマクロな景色が浮かび上がること、

全体として秩序のあるまとまりでありながら、個々にはわずかに条件が異なる光景が写り込んでしまうことが

効果的に現れている作品です。

つまり、本人が意図してもしなくても、必然的に「多視点」的な視覚表現に置き換わってしまうのが

今回のワークショップでは重要なモデルでした。

また、様々な箇所に視線を写しながら、総体としてその光景を認識しているという視知覚的な問題にも

制作を通して考える契機になるのではと考えました。

 

撮影した写真は当日空間の秩序に合わせて並べて完成。

完成した作品について

・与えられたキーワードをどのように解釈したか

・どのような意図で撮影場所を選んだか

をテーマにグループで発表し合い、他人の視点を知るためのディスカッションをしました。

発表の中で出てきた言葉は二次キーワードとしてひたすらメモる。

最初に用意した6つのキーワードからどれくらい二次キーワードが派生するかを絞り出すような作業です。

一通り作業を終えたら、僕が全員の作品を順番にレビューして

また違う見方をコメントしていきます。

(結局制限時間を大幅に超えてしまったため、全員きっちりコメントできず、、)

 

こうすることで、日常目にする景色を違う視点で捉えること、

与えられた一つのキーワードが、作品を通してみることで様々な文脈として現れること、

さらに他者の作品と並列させてみたり、僕からのレビューを加えて行くことで

まだまだ色んな視点があること気づく、

こういった視点の広がりを、受講生の皆さんは実感してくれたようで

とても有意義な時間になりました。

 

もう少し僕がきちんと時間を図りながら進めて行ければ良かったんだけど、、

いやはや、これはほんとに反省。。

終了後は受講生から質問が相次ぎ、とても濃密な時間でした。

こうしてレクチャーやワークショップのことを考えると、

実は僕自身が一番勉強になっていたりします。

 

受講生のみなさん、東京デザインプレックス研究所スタッフのみなさん、

お疲れさまでした!!