オリエンテーションを終えて

2012.07.19


先日、朝からムサビに出講していました。

今年の後期から「ダイアグラム」の授業を担当することになっていて、

その授業のオリエンテーションです。

僕自身が大学で授業を受け持つのが初めてだったりするし、

自分が学んだ場所に非常勤として戻って来るという意味でも

色々と感慨深いところもあります。

30分という限られた時間の中で

計画している授業の流れを詳細に説明するのは難しかったけど、

大まかな概要は一通り話すことはできたのではと感じています。

 

自分が実際に仕事の中でダイアグラムを制作していて思うことは

情報発信のリテラシーがどんどん向上し、その手法も多様化している昨今、

受け手側がどのような思考で膨大な情報に向き合うべきかという点は置き去りになっていること、

その意味で、一見脈絡の無いように見える情報に文脈を与え、

読み取り可能なものにするダイアグラムは、

より一層重要な手法になってくるのではないかと実感しています。

 

とくに震災直後の原発を中心にした情報の混乱ぶりの凄まじさは記憶に新しいと思います、

昨日ベクレルがどうのと言っていたら、次の日はシーベルトがどうのと言っている。

様々な原発に詳しい識者が登場したと思えば、テレビの裏側の、

あまり耳にしたくないような噂も次々と出て来る。政府の判断や行動の矛先も良く分からない。

こういう混乱の中で、自分の居場所や安全をいち早く知らせるのに役立つはずの

SNSサービスなどは、無為な情報がただ垂れ流される装置になりかけた。

 

こういった情報の混乱が起きるそもそもの原因というのは

発信者の問題というよりも、受信者のリテラシーの追いつかなさだと、僕は思ってます。

特に有事のときに巻き起こる非常事態によってこういった問題は顕在化していくわけですが、

普段から多くの人が、情報に対して受動的な姿勢であったことが見えてきます。

 

一方で能動的に情報と接する習慣を持っている人は、実に冷静な思考を巡らせていました。

僕の知り合いの中でも明晰な人はとくに慌てることもなく

数日後、数ヶ月後、数年後の状況までを半歩先を行くような視点で世の中を俯瞰しているような

そんな振る舞いを見せていた。

 

もちろん全員がそのような能力を持つことは難しいと思いますが、

ことヴィジュアルコミュニケーションデザインという領域に関わる人であれば

あらゆる情報には全て文脈が潜んでいて、それを読み取ること自体がとても重要である、

という視点を持っていなければならないと強く感じています。

 

ダイアグラムという言葉を簡単に使ってしまうと

グラフとか表とか地図とか、そういった専門の表現方式ばかりが頭に浮かんでしまうかもしれないけど、

情報を分析し、編集し、文脈を見つけ出して、適正な方法で可視化するというプロセスは

広義に捉えて行くとヴィジュアルコミュニケーション全体の領域に共通した

とても重要なプロセスだと感じています。

 

そんなわけで、僕がこのダイアグラムという授業を担当することで

上記のような普段の仕事で実践を通して感じていることを踏まえながら、

ダイアグラムを通して学生自身が能動的に情報に対して文脈を見つけ出そうとする姿勢が身に付くような

授業を考えたいと思っています。

 

そんなわけで、オリエンテーションを終えて少しだけホッとしたところですが、

9月から始まる具体的な授業計画に向けて、もうひと練り、

思考を巡らせてみようと思います。